貸借対照表

4. 貸借対照表とは

「貸借対照表」(Balance sheet略称B/S)とは、会社の決算期末等のある一定時点における資産、負債、純資産の状態を示すものです。

「貸借対照表」は、左側(借方)は「資産の部」に、右側(貸方)は「負債の部」及び「純資産の部」に分かれて表示するようになっております。

「資産の部」には、企業が所有しているプラスの資産が一覧表示されているエリアです。上から順番に、「流動資産」「固定資産」「繰延資産」と言いますが、通常は現金化しやすい順番に各勘定科目が並んでいます。「負債の部」には、企業が所有するマイナスの資産である負債が一覧表示されるエリアです。

上から順に、「流動負債」「固定負債」が表示されています。貸借対照表は、左側と右側の合計金額が一致するルールとなっており、「資産の部」の合計と、「負債の部」および「純資産の部」の和である「総資本」が同額とならなければなりません。


自己資本比率が高い会社は優良企業であると言われることが多いですが、株主の払込資本(資本金)とそれを活用して獲得した利益の合計額(自己資本)が蓄積されてくると、「純資産の部」の金額は相対的に大きくなり、企業財務の健全性をあらわす指標である「自己資本比率」(純資産÷総資本)は高くなります。

貸借対照表とは

5. 資産(お金の使いみち)は表の顔、負債・資本(調達)は裏の顔

「資産の部」のイメージとして捉えやすいのは、「固定資産」だと思います。

外から見た会社の姿は土地や建物(事務所・工場・倉庫等)、事務用機器、自動車等ですね。
工場を見れば機械が並んでいますし、倉庫には商品や材料(在庫)があります。このように外部から見える会社の主なモノは「資産の部」にあります。会社が営業活動する結果としての現金・預金や売掛金、在庫、投資有価証券等の資産は、会計帳簿にも載っています。

資産は企業がお金を使った(お金の使いみち)結果残っているものとも言えます。
そのお金の源泉が何かと言うものが「負債の部」に表現され、ここにはお金の調達内容が表されます。

大雑把に言いますと業績の良くない会社(自己資金の少ない会社)は、「負債の部」に記載される借入金や支払手形、未払金といった勘定科目の金額が相対的に多く、業績の良い会社は「純資産の部」が充実しています。

資産はお金の使いみちの姿であり、負債は資金調達(お金の源泉)の結果ですので、外見が派手でも借入金などの負債の多い会社は経営上のリスクが大きいと判断されます。

6. お金があるということ

会社に資金があることはとても大事なことですが、会社がお金を調達する方法は、

①利益をあげる
②金融機関から借入する
③増資する

の3通りしかありません。

このうち②は無尽蔵に金融機関が融資をしてくれるはずもなく、会社の業績次第で融資枠も一定の範囲内に決まってきます。

また、③の増資も中小企業の場合は限界があります。

したがって、中小企業経営の要諦は業績をしっかりと固めつつ必要な資金調達は金融機関に融資をお願いしながら、といったことになるでしょう。


資金調達とは、資産(表の顔)に関係しますから、不要な資産を購入したり、営業上の失敗で売掛金の回収が遅れたり、在庫が陳腐化して売れなくなったり、といったことがあると経営的には困る(資金繰りが悪化する)ことになります。


お金があるということ

7. 美しいバランスシート

お金はいい加減な使い方をするときちんと働かないで無駄な資産(不良資産)として会社の決算に長く残ってしまいます。美しい「貸借対照表」を作ることは中小企業経営においては大切で、不良資産を出さないような経営管理が必要です。「流動資産」では、受取手形や売掛金等の売掛債権が取引の約定期限内にきちんと回収できているか常に管理しなければはなりません。また、商品在庫等についても販売できるものを持つことが重要です。正常な価格で販売が見込めない商品等は、在庫と言わずに「罪庫」と言ったりします。設備投資も一緒です。受注増加が見込めるので機械を購入したが、思うように受注が伸びなかった、というような事例は経営上あり得ることですが、不良機械になってしまうと借金が残る他、工場のスペースを占領して生産効率が悪くなります。「流動資産」における、仮払金や貸付金、立替金、未収金といった勘定科目も同様です。必要性をよく考えてお金を使わないと、あとから何に使ったかよく説明できないような勘定科目や金額残高が多いと、金融機関からは不良債権ではないかと警戒されてしまいます。経営を主宰する社長がその生涯を打ち込んできた会社の姿を一番よく表すのが「貸借対照表」です。魅力ある事業を築いた証として、財務を点検する習慣を身に着けてさらに磨き込む(筋肉質の「貸借対照表」を作る)ことが大切です。

8. 実質純資産の有無(それ(資産)はあるのか?ないのか?)

貸借対照表の資産の本質は損益計算書を通じて費用化されるものであると言えます。中小企業における資金は人間の血液と同じで、会社を資金循環の観点から見ると、資産は回転させることで収益を生み、回しぬくことで経費となって財務状態は健全化してゆきます。中小企業の体内には資金が常に循環しており、不良資産が発生すると血流が悪くなり、最悪の場合血管が詰まって破裂したりすると(資金循環が途切れたとき)会社は倒産します。会社の資金循環構造を適切な形に保つことは、人間では血流が正常に流れているときに元気が出るのと一緒で、企業活動も活発で効率的な動きに繋がります。

金融機関が融資を検討する際にも貸借対照表の資本(純資産)に注目しますが、実質的に資産があるかを時価等で判断した結果、純資産がある(資産超過)か、そうでないか(債務超過)を見極めています。不良資産の代表的なものは、売掛債権(売掛金や受取手形)のうち回収ができないもの、不良在庫(死蔵在庫)、減価償却不足の設備、時価割れの資産(賃貸物件、ゴルフ会員権)、社長貸付金や仮払金・立替金等で内容が不透明で回収方針が不明確なもの、等です。


9. 見えない資産を活用する

中小企業経営において限られた経営資源を最大限効率化させるには、「貸借対照表」に計上されている、「有形の資産を磨く」必要があります。

その前提として、きちんと儲けるための仕組みや「ノウハウの蓄積」とか「知的財産」や「人材の育成」などの「無形の資産を増やす」ことで大切です。

人づくりと財務基盤の強化は車の両輪の関係にあります。
強い中小企業経営者は、人材育成にとても熱心であり、会社のお金と個人のお金は峻別しています。

見えない資産を活用する